パール・ジャムというのは、ロックの究極の機能美を実現している。彼らの研ぎ澄まされたハード・ロック・サウンドは、それだけで問答無用にカッコいい。付加価値的なイメージとかは全く必要ない。90年代前半の"グランジ"ブームに乗って登場した彼らだが、例えば、ニルヴァーナ辺りに比べて"アングラ"的な匂いは極端に少ない(但し、俺はそっちも好きなので誤解なきよう)。かと言って、日本やドイツで特にもてはやされる典型的"王道"ヘヴィ・メタルとも一線を画している。すなわち、洋式美ではなく機能美。だからこそ"王道"がダメな俺みたいなヤツも、彼らのサウンドには一発で参ってしまった。
そのポイントはビートとリフ、そして"うた"というロックの基本型に向けて、限りなく収束していくことにあった。少なくとも前作までは。当初アルバム・タイトルは、なしの予定だった(!)というのが象徴的だ。しかしこのサード・アルバムは違う。もちろんこれまでのギター・ロックもちゃんと収められているものの、それに混じってアバンギャルドな音の遊びや奇妙な弾き語り風ナンバーなどが顔を出し、全体的にベックやセバドー(元ダイナソーJrの人がやってるヘンなバンド)にも通じる""歪んだ"構成となっている。"靴の中にも、頭の中にも、そこら中に虫がいる…"と歌われる曲などは、ほとんど精神を病んだ者の独白のようだ。これだけで、ぼくは彼らの新しい方向性を全面的に支持する。前作以降、彼らは様々な出来事にぶち当たった。それらと対峙するために、機能追求の方法論が"収束"から"拡散"に変わった。そんな印象を受ける傑作だ。