評者はクラシック音楽が好きで、その縁で期待して買い込み、面白く読了した。著者が小さいころ住んでいたらしい山形方言、くだけたエッセイでは必需ともいえる関西弁、さらに音楽家が話せれば有利らしい片言のドイツ語なども織り交ぜ、にぎやかに、リズミカルに、あけっぴろげに、そして明快に、クラシック音楽、バイオリンの修行、NHK交響楽団の内側の模様、内外の名指揮者・名ソリストの素顔などについて、気取りなく、ざっくばらんにペンを運んでいる。人にも十分に勧められる1冊だと思った(という割には刊行が古く、小さな本屋には店頭在庫もないけれど)。
ただ、他のレビューでも見受けたが、単行本の折のタイトル(「肩が凝る」)を無断で替えた文庫本による再刊(「目が赤い」)というのはいかがなものか。奥付の手前に「ことわり」が入っており、「文庫本のためのあとがき」のおしまいにもタイトルの変更について明記してはいるが、「目が赤い」に替える必要がまるでなかった(「肩が凝る」のままで何の問題もなかった)という意味で、このタイトル替えは、やっぱりセコいと思う。