いやもう、本当に惜しい本である。バイオマスに関して最も重要なのはシステムやコストであって、先端技術や研究成果ではない。それが全く理解されていないために、「特大ファールの後に凡退」的な竜頭蛇尾の出版企画になってしまった。ブラジルの砂糖黍由来のバイオエタノールの効率が非常に高いことをこの著作のお陰で初めて知ったが、その長所も帳消しになりそうな出版企画・編集の拙劣ぶりである。
どなたか存じ上げていないが、編集担当の方には猛省を促したい。バイオマスは非常に広大な裾野を持っている上に、日進月歩で各分野の技術が進化するので、厄介なテーマなのである。それを専門家に丸投げしてはいけない。ジュニア新書の想定読者層としても不適である。
環境ジャーナリストか環境問題を概括できる専門家(多分、経済系かマネジメント系の方)がバイオマスの現状を概観した章を冒頭に置き、次に世界各国それぞれの国情に応じたバイオマスへの取り組みを紹介し、その後に最新の研究成果を項目立てで並べる、というのがベストであっただろう。
そして絶対に記載しなければならないのは、「必要コストを踏まえたバイオマスの効率性」と「バイオマスにおける諸問題(例:穀物価格の高騰やパーム油生産による環境破壊)」である。場合によっては丸紅経済研究所の柴田明夫氏(あの『食糧争奪』の筆者)への執筆要請も必要だろう。
この失敗の反省を生かし、改めて3巻本立てほどで岩波新書での企画を要望したい。『世界のバイオマス利用のすべて』『バイオエタノールは本当に環境に良いのか?』『これから伸びるバイオマス − 復活する日本の森林資源』といった題目が良いだろう。