読みやすい本で一日で読破可能。題名はバイオインフォーマテイクス(生命情報学)となっているが、実際は分子進化学・分子系統学の入門書。他の研究者の原著を尊重する姿勢が随所にみられ著者の研究者としての基本姿勢に学ぶ読者も多いと思われる。写真や図が豊富なのも魅力だが、生物学のある程度の予備知識は理解には必要(たとえばcDNA、ヘモグロビンといった用語が説明なしに使用される)。2008年出版の本だが、参考文献は2007年までの最新のものを引用しており、各章ごとに文献が引用されているので学術書としての体裁がとられており記載に信頼がおける。著者自身が体験したこの分野の発展や体面した研究者の話も書かれており、単なる学問の入門書ではなく著者の人間的側面が伺える内容。分子進化学は生命情報学の一部で、そのDNA配列解析の歴史などがノーベル賞が与えられた仕事を中心に丁寧に説明されて、この分野の誕生した経緯が楽しめる。生命情報学のなかで蛋白質の構造解析、プロテオーム、パスウェイ解析、システム生物学などについては記載はないか不十分。また、この分野の核となるデータの解析方法に関してデータベースのウェブサイトなどの紹介にとどまり、実際にはコンピュータを使った複雑な解析であると述べられるにとどまり、解析法についての記載はない。8つのコラムにはオルソログやノックアウトマウスなどの用語説明がわかりやすく書かれており、本文の理解の助けになる。巻末の人名索引が便利だが、欧米人のそれはカタカナの記載のみで英文字が併記されていないのは和文の記載が誤っているときなどには問題(たとえばノックアウトマウスのマリオ・カペッキをカペッチとしている)。