幸田真音、桐野夏生、永井愛は、いずれもわたしと同
い年で、文章の行間に同じ時代を生きた共生感が感じら
れて、いつも注目している(劇)作家達です。
なかで、幸田真音は、とかくドライになりがちな経済小
説に女性の主人公を登場させて、新風を招き入れました。
そこには、確かに「男女雇用機会均等法の施行や、DIN
KSブーム、そしてそれを後押ししたバブルの時代を経て、
八〇年代にキャリアをめざした女性たち」(『偽造証券』)
のその後がしっかり刻まれていました。
しかし、最近の彼女の作品ではそういうモメントが次第
に希薄になっているように思います。本作でもTOBを仕
掛ける投資ファンドを虚業とし、仕掛けられた音楽プロダ
クションを実業として対比しているのはよいとしても、主
人公の女性ディーラーと父親(先の音楽プロの役員)との
関係の設定が安直に思えて、共感できませんでした。
改めて著者のプロフィールをみると、政府の各種委員会
の委員を務めているとのこと、偉くなったんですね。数年
前に新国立劇場に永井愛演出の芝居を観にいったとき、
彼女がテーブルを出してひとりで自著の販売をしているの
を見かけました。幸田真音にも、もういちど初心に立ち戻
ってくれるよう望みます。