ボルジンの本拠地に向かう中国代表団の一行に潜り込み潜入するピットとアル。拉致された地震学者の存在の有無確認のための潜入探査が敵に発見され、二人は脱出をはかる。二人のゴビ砂漠での逃避行のプロセスが下巻冒頭でまず読者を惹きつける。同じ頃、ハワイではサンゴ礁の調査に携わるピットの二人の子供が偶然に難破船を発見し、事件に巻き込まれて行く。また、一方で、地震によりカーグ島の石油基地が壊滅状態となる。
世界の石油基地破壊により想定される石油危機シナリオは現実感がある。
全く異なるエピソードが同時並行で進行するので、なぜこれらのバラバラのエピソードが秘宝の奪取と関係するの?とその関連づけに興味津々とならざるを得ない。
ウランバートルに生還したピットとアルにルディ・ガンも加わり、再度ボルジンの本拠地に侵入し、拉致された地震学者の救出を実行するという展開になる。この救出プロセスで、これまでのエピソードがすべてピットの推理として統合されていく。また、ルディ・ガンが脇役として今回は大活躍する。やはりここに来てストーリー展開としては、最も読み応えが出てくる。地震学者を梃子に石油を武器としたボルジンの世界制覇の野望を粉砕するピットはいつもながらのヒーローだ。
最後の章「楽園への旅路」は、やはり、カッスラー流の楽しい結末という感じである。
砂漠地帯でのピットの活躍の一方で、ピットの冒険人生に長らくつきあってきた読者としては、ピットの年を加えてきた肉体の疲れの描写もさりげなく自然であっておもしろい。