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ハーモニー (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
 
 

ハーモニー (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション) [単行本]

伊藤 計劃
5つ星のうち 4.3  レビューをすべて見る (57件のカスタマーレビュー)

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第30回(2009年) 日本SF大賞受賞

内容紹介

ベストセラー『虐殺器官』の著者による“最後”のオリジナル作品<br> 21世紀後半、〈大災禍〉と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は見せかけの優しさと倫理が支配する“ユートピア”を築いていた。そんな社会に抵抗するため、3人の少女は餓死することを選択した……。 それから13年後。死ねなかった少女・霧慧トァンは、医療社会に襲いかかった未曾有の危機に、ただひとり死んだはずだった友人の影を見る――『虐殺器官』の著者が描く、ユートピアの臨界点。日本SF大賞受賞作。 --このテキストは、 文庫 版に関連付けられています。

登録情報

  • 単行本: 354ページ
  • 出版社: 早川書房 (2008/12)
  • ISBN-10: 415208992X
  • ISBN-13: 978-4152089922
  • 発売日: 2008/12
  • 商品の寸法: 18.8 x 12 x 2.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.3  レビューをすべて見る (57件のカスタマーレビュー)
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62 人中、56人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 2009年の日本SF大賞受賞作品, 2009/12/27
By 
yukkiebeer - レビューをすべて見る
(殿堂入りNo1レビュアー)    (トップ50レビュアー)   
レビュー対象商品: ハーモニー (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション) (単行本)
 体内に埋め込まれた医療分子が個々人の健康状態を常にモニターし、病気をいち早く発見してくれる社会。酒やタバコといった健康被害に結びつく物質も既に排され、人々は健全で長命でいる世界を実現した。そうした社会システムに悪影響を及ぼす恐れがないかどうかを監視するWHOの生命監察機関に勤める霧慧トァンは、少女時代に幼なじみ二人と共に自殺未遂を起こした過去がある。
 あれから13年、ともに生き残った友人キアンが目の前で自殺を遂げる。あのとき一人逝ったミァハの影がちらつき始めたトァンは、医療経済の中心都市となったバグダッドへ向かうのだが…。

 誰もが健康で天寿を全うできる社会。その夢の世界が実現した21世紀半ばに、その社会に矢を放つ組織の存在が見え隠れするという物語です。
 読者の眼前に広がるのは誰もがハーモニーを保って生きるユートピアなのか、それとも自殺する自由と意志が抑圧されたディストピアなのか。頁を繰るにつけ、眼前の世界に対して自分の判断が大きく振幅するのが手に取れるのです。

 オルダス・ハックスリーの「すばらしい新世界 (講談社文庫 は 20-1)」でも、知的で“進化”した文明人と、“野蛮人”とが対極に置かれたディストピアの世界が展開していましたが、あの小説を読むと“野蛮人”に心寄せる自分が見えてきたものです。まさにあの、理屈では処理しきれない不思議な感覚がこの「ハーモニー」によって私の中に引き起こされたのでした。

 書き下ろしであるというこの作品の最終頁に「私の困難な時にあって支えてくれた両親、叔父母に。」という作者の謝辞が置かれています。
 新聞報道で知ったところによれば、作者は今年(2009年)3月に肺がんで亡くなるまで病室のベッドでこの作品を書いていたとのこと。享年34歳という若さの彼が、病気が消滅して天寿を全うできる社会を独特の否定的な視点で描いたということを思って、心震える思いがしました。
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40 人中、34人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 ゼロ年代の一つの到達点, 2011/1/3
私の中では「虐殺器官」は正直3に近い4です。

しかし、これは間違いなく5です。
それも、何故か昔読んだアシモフやクラークの名作と同様の
感動・恐ろしさを何年ぶりに感じました。
簡潔的な文章でこれほどの内容とは。
無駄に長編化する現代の作家に対する一つのアンチテーゼでしょうか。

これから読むなら、是非「虐殺器官」を読んだ上で。
焦る必要はない、今後しばらくは(邦洋問わず)これほどの作品は出ないから。

ただ一つの、残念な点は、作者がミァハの言う
「あちらの世界」に既に旅立たれてしまったことだけ。
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23 人中、19人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 “真綿で首を絞めるような”現代日本を鋭く批判。, 2011/1/13
By 
Kiyofumi M (東京) - レビューをすべて見る
(トップ1000レビュアー)   
本書の最後の方でミァハの口を通して宣言されているように、本書は1932年に発表されたハクスリーのSF小説の古典すばらしい新世界 (講談社文庫 は 20-1)の換骨奪胎、もしくはオマージュだと思われます。見掛け上のユートピアに異分子が入り込むことによって、その虚構が暴かれていく。その様を通して現代社会を鋭く批判する。ミァハは、“真綿で首を絞めるような”今の日本に生きることの息苦しさや見えない叫びを代弁しています。

多くのSF小説同様、本書も最初の方は状況説明が多く、決して読みやすいとは言えません。そこでは現代の我々の常識が通用しないため、発想をアジャストするのにやや時間がかかりました。しかし、徐々に話の方向性が見えてきてからはいよいよ面白くなっていき、エンディングへと突き進むスピード感には脱帽させられます。

確かに、日本語でしか読めないのはもったいなく、各国語に訳して世界の人にも読んでほしいと思います。また、リドリー・スコットあたりに映画化してもらい(世界観をどこまで描ききれるかは別として)、その主張を世界に知らしめたい作品です。
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