本書は、ハーバード・ロースクールにおける教育方法、カリキュラム、試験・成績評価、司法試験、教員、学生等の各観点から、制度改革の歴史的経緯を踏まえつつ分析・論述された、同校において学生として学びかつ教鞭を執った経験のある著者2人による共著です。
ハーバード・ロースクールについては既に英米法の大家である故・田中英夫教授による
ハーヴァード・ロー・スクール (1982年) (日評選書)があり、ハーバードではありませんが同様に名門ロースクールであるコロンビア・ロースクールのJ.D.プログラムでの生活について紹介した
リーガル・エリートたちの挑戦―コロンビア・ロースクールに学んで等がありますが、いずれも絶版になっており、本書は現代の米国のロー・スクールの実情を知ることのできる文献として貴重なものと言えると思います。
ただ、本書には、現在の日本の法科大学院の実態について、ハーバード・ロースクールのかつての姿との類似性を見いだして批判的に論じている部分が随所に登場していますが、確かに正しい指摘と思われる点も相当数あり、本書が「米国ロースクール制度の現状に照らした我が国法科大学院制度への批判」といった論文なのであれば価値あるものだったと思いますが、かなりのページ数が割かれていることも相俟って、少なくとも当該部分については、本書のタイトルから(私も含めた)一般的な読者が期待する内容ではなくなってしまっているように思われます。
なお、著者らのハーバード・ロースクールにおける具体的経験も盛り込まれていますが、(フット教授の部分ではほとんど感じられませんでしたが)柳田氏の記述部分ではハーバードでの経歴を過度に誇示するかのような表現が鼻に付き、あまり良い印象は受けませんでした。また、本書のテーマからして当然のことながら「ハーバード・ロースクール」という単語が無数に登場しますが、カタカナで文字数が多いこともあり、文脈から明らかな場合にまでも繰り返されると却って読みにくく、(穿った見方をすれば)ページ数稼ぎにさえ感じられてしまうのが残念でした。