海外の著名教授の授業を扱った番組や授業再現型著作が好評であることに便乗した一冊。著者序文からは、マクロ経済学のケーススタディを扱うAMPの実況中継を意図した著作であると早合点してしまうが、中身は一般聴衆相手の平凡な講演会レベルである。レビュアーは本書からただ一つの新知見も得ることができなかったが、多くのビジネスパースンも既知の世界経済の解説を長々と聞かされるようで失望するだろう。他のレビュアーも指摘しているが、「共著者」とされる仲條氏が本書に対してどのような貢献をされたのかも不明である。第6章「巨大債務に悩む富裕国」において、「・・・金融機関の余剰準備金が日銀に積まれることになった。2001年と2002年に日銀は経常収支を3000億ドルに引き上げ、そのレベルを保とうとした」(p.216)とある。日銀が「経常収支を引き上げ、そのレベルを保つ」とは、何を意味するのか? おそらく、英文の“current account”(当座預金)を「経常収支」と勘違いしたのだろう。この誤訳で「共著者」の経済学の素養のほどがはっきりした。「実証性」を謳いながら、データの出所は一切不明なこと(一部の数値は正確性に疑問がある)など、いくつかの不備に目をつぶって辛抱強く通読してきたが、この一語で本書の真価がわかった。学生やビジネスパースンへの推奨図書には加えるべきでないと。結局のところ、本書は「共著者」の自己宣伝以上の意味はない。ヴィートーは、そのために一役買ったということだろう。それにつけても、これまでレビュー実績が皆無かそれに近い人がほぼ同時期に高評価レビューを書き込んでいるのも不可解である。