おそらくジャンル分けが困難であろうが、ミステリーになるのだろうか。
格好のつかない探偵という題材も面白いが、彼がことあるごとにマーロウを持ち出し、しかもそれがことごとく肩透かしをくうのが面白い。
話の展開も悪に対する正義という見せかけから、全てが主人公の逆へと転がっていく。
しかしそれに不快感、不条理感を伴わないのは、やはり作者の力だろう。
サブキャラクターもウィットにとんでおり、決して大活躍をするようなこともないが、存在感を確かに示してくれる。
そしてヒロイン(?)だ。
おそらくこの手の作品としては希有だろうが、彼女もまた大活躍をすることはない。驚くべき特技も持ち合わせてはいない。
しかし主人公を支える役目をしっかりとはたしていて、それが作品のラストにおいて、どこか切ないが悲しみだけで終わらない要素を醸し出している。
アウトローに徹しきれず、しかし救世主にもなれず、現実の冷たさを味合わせながら、しかし読後の清涼感を感じさせるこの作品はまさに傑作であろう。ハードボイルドではないけれど。