この作品はシューベルトに始まりシューベルトで終わる。全編に盛り込まれた音楽が効果的に使われており、それらが退廃美と共に優雅な映像美をかもし出している。
トニー・スコット監督は本作品をもって長編映画監督としてデビューしたわけだが、その配役がいきなりC ドヌーヴ、D ボウイ、S サランドンであるのはすごい。ご他聞に漏れず、サランドンは『ロッキー・ホラー・ピクチャーショー』時代と同様に豊かな胸を披露してくれるのだが、ドリーブの『ラクメ』をバックにドヌーヴとのカラミを演じ、両女優の美しさを際立たせたのには陶酔の域すら感じられる。更には原作にはないピアノソロによるイントロダクションにより、むしろオリジナルのオペラ『ラクメ』よりも優雅に仕上がっている。このあたりはきちんとサントラ版で表現されているので、こちらも是非チェックしていただきたい。
特筆すべきは、そのストーリー展開である。前半はボウイとドヌーヴが主役であり、ドヌーヴとサランドンの濡れ場をもって主役がサランドンとドヌーヴに入れ替わるのだ。このあたりの演出は見事!ほぼ別々の映画が両女優のカラミで繋がっている。むしろ、この部分を間奏曲とし、1部、2部と2部構成になっている作品だと言ったほうがいいだろう。
後に『トップガン』『ビバリーヒルズ・コップ2』と続くが、音楽と映像との融合のテクニックは、すでに本作品から披露されていたと言えよう。
本作品を一言で表せば、「綺麗な映画」であるということ。美の世界をもって吸血鬼物語を表現した作品であるが、そこかしこの演出によって猟奇的に「血」の雰囲気が漂ってくる。
終演時にNY市警の刑事が出てくるのだが、その立ち居振る舞いがあまりに俗っぽく描かれていて、舞台を吸血鬼の世界から現実社会へと引き戻してくれるのが印象的だ。嵐と共に去りぬということか。