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5つ星のうち 5.0
この素敵な作品に、映画の女神の接吻を!, 2012/3/12
レビュー対象商品: ハロルドとモード/少年は虹を渡る [DVD] (DVD)
ああっ、本当にすばらしい!途方もなく面白く、そして切ない・・・。
「ファンタジー」という言葉があるが、これこそ映画のファンタジーだ!
自分は映画ファンでありながら、心のどこかで映画は結局文学にはかなわないのでは・・・、と思ってしまうことがしばしばある。しかしそれは間違いだ。映画の持つ無限の可能性を、表現しきれている映画が本当に少ないだけなのだ。
『ハロルドとモード 少年は虹を渡る』のような映画に出逢った時、映画の本当の力に圧倒され、心が震え、もうこのまま死んでもいいと思ってしまう。
「死」に憧れる少年、ハロルド(ルース・ゴードン)。彼はいつも自殺の狂言をしては母親を困らせている。趣味は他人の葬儀の見学。ある日、彼は同じように他人の葬儀に紛れ込んでいる老婆、モード(バッド・コート)と出会う。天衣無縫なモードに、いつしかハロルドは心惹かれ、彼女こそ自分の伴侶だと思うようになるのだが・・・。
この映画の奇妙な個性のひとつに、ハロルドがあの手この手で行う「自殺ごっこ」の数々がある。映画冒頭の、居間で首を吊るシーンに始まり、溺死、拳銃、焼身、ハラキリ・・・と枚挙にいとまがない。一見すると自殺願望の少年の話に見えるが、実は重要なのは、ハロルドは決して本当に死んだりしない、という事。ハロルドは、あくまで自分にとって未知の「死」という存在に憧れているだけで、本当に死にたい訳ではないのだ。
一方、モードおばあちゃんは、ハロルドと似ているように見えて実は違うことが判る。死=葬儀は終わりではなく、生命の輪廻の象徴だと思っている。
無表情で無口で他人とのコミュニケーションを避け、常に死化粧をしているような蒼ざめた顔色のハロルドと違って、モードおばあちゃんはとにかくやんちゃでおちゃめで、キュートだ。無免許で、車は悪びれもせずに人様のものを拝借。枯れかけの街路樹を救おうと、引き抜いて森に植え替えてしまう。それも他人のトラックを使って(笑)。
そんなモードおばあちゃんに振り回されながらも、ハロルドはついに自分と同じタイプの仲間と出逢ったと感じる。
「今まで生きてなかった」
「懸命に生きるの!」
これは、少年と老女の、年齢を超えた恋愛の物語だといわれるが、自分は観ていて、二人の間に芽生えたものは愛でなく、むしろ友情に近いものではないのか、と思う。確かに映画の中では、ベッドシーンまであるし(笑)、最後は結婚までするのだが。でも・・・そんなモードおばあちゃんにも、決してハロルドには明かそうとしない「秘密」があった・・・。
この映画は、決して他人と共有することが出来ない孤独を背負った人々の物語なのだ。ハロルドの行う数々の「自殺」の狂言は、決して死への願望ではなく、社会やマジョリティーに迎合できない、マイノリティーの人々の孤独や哀しみ、疎外感を象徴するものだと思うのだ。
とても切なくて哀しい物語なのだが、監督のハル・アシュビーは、そうしたキャラクターたちに優しい眼差しを向け、この物語を見事にファンタジーに昇華する。
緑の芝生の中に、どこまでも列をなす白い墓石の群れは、まるでガーベラの花畑。
青空を映した水溜りの中に林立するガラクタのトーテムポール。
風景が本当に素晴らしい。そこに映っているものは見まごう事なき現実の風景なのだが、映画の魔法がかかって、ハロルドとモードにしか見えない世界が映し出される。
映画はこの瞬間、文学に肉薄し、そして軽々と飛び越えていってしまう。
これが映画だ。言葉では表現できないものが、ここにある。自分が愛した映画の姿が、ここにある。
今の映画は、リアリズムやミニマリズムへのこだわりは凄いと思うが、そうしたものに拘泥するあまり、映画の持っている魔法を忘れてしまっていると思うのだ。
これは、1972年に製作された、昔の映画だ。
でも、自分にとっては、今年の最高の映画に出逢ってしまった気がする。
今までこの映画を知らなかったことが悔しく、そして今出逢えた事がとてつもなく幸せでしょうがない。
38 人中、35人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
70年代の知る人ぞ知るカルト作、祝!DVD化!, 2011/12/12
レビュー対象商品: ハロルドとモード/少年は虹を渡る [DVD] (DVD)
昨年より企画興行され、“あの時代”のアメリカ映画が大好きな映画ファンたちに静かなる支持を受けている「70年代アメリカン・ニューシネマ特集」。中でも、大きな期待を以て上映されていたのが、ロバート・アルトマンの「ナッシュビル」と、ハル・アシュビーによる今作であったと思うのだが、その2作が、な、なんと、相次いで初DVD化にして廉価版で登場!本当に、パナマウント・ホーム・エンターテイメント・ジャパンさん、あなたはどれほど素敵なの(笑)。
一部でカルト的ファンを持つ今作、あらすじはゴッドキングエンペラー氏が詳細に語っておられるので、そちらにお任せするとして、今作の魅力は、まずは、主人公ハロルドのユニークなパーソナリティに拠るものであろう。
いきなり、大邸宅で首吊り自殺を図るハロルドを横目に見ながら、まるで意に反さぬ様子で平然と電話で話し込む母親の姿に、こりゃなんだと思いつつ、実は、ハロルドは、狂言自殺愛好家な事が分かるオープニングからして、人を食った面白さに溢れている。
ただ、彼は、ただの変わり者ではない。実際、霊柩車を乗り回し、折に触れ、様々な自殺ごっこに興じるハロルドの感覚は、おふざけの中にも、ナイーヴで抑圧された自意識と死生観がはっきりと見て取れる。
そんな死に取り憑かれたハロルドが、生への希求を感じる対象となるのが、80歳のモード。死と向かい合っている彼が、唯一心を通い合わせる事の出来るのが、同じく葬式愛好家で自動車泥棒を繰り返す老婆なのだ。
孤独で自閉的な少年が、天真爛漫な老婆と共鳴し、生きる物の尊厳を教えられ、恋に落ちる。
ふたりの不思議な、しかし純粋な恋の顛末がどうなっていくのか、是非御覧頂きたいが、奇妙なテイストに彩られたこのファンタジー、ラストの主人公の行動が、ニヒリズムや死に逃げ込もうとする同時代の若者たちへのアシュビーからの“答え”になっていたようにも思える。
ハロルドとモード、それぞれを演じたのはバッド・コードとルース・ゴードン。どちらも忘れられない名演だが、コードは、アルトマン一家として注目されるも、これ以降長らく姿を消した。
思わずサントラ盤が欲しくなる気にさせる楽曲たちの数々はキャット・スティーヴンス!この人には、イエジー・スコリモフスキーの、あの絶叫的な「早春」のテーマ曲もあったな。
監督のアシュビーは、ニューシネマ・エイジの代表的監督、威光高に反体制を叫ぶ事なく、繊細な中にも知的でシニカルな映画を撮り続けた。
脚本は、コリン・ヒギンズ。こちらも、このほど、初DVD化なった傑作「ファール・プレイ」を手掛けたコメディの名手だ。
そして、奇しくもふたりは、1988年、同じ年にこの世を去っている。
24 人中、21人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
パラマウントさんはイイ仕事をしてますね!見直しました!, 2011/12/11
レビュー対象商品: ハロルドとモード/少年は虹を渡る [DVD] (DVD)
まさか、このカルトの名品がDVDになるなんて驚き桃の木です!この映画はつい最近劇場で見たばかりでした。発売元の天下のパラマウントさんは、「ナッシュビル」「アメリカを斬る」
「素晴らしき戦争」「ファール・プレイ」という風に次々と低価格の昔懐かしい映画のDVDを
連打してくれます。ホンマに夢のようです。これからどんな傑作がDVD化されますか、楽しみ
が尽きません!ひたすら感謝です!ありがとうございます。