これ以上削ることはできないという簡潔な文章で、かつ1作品が長くて3ページ程度なので表面上の文意はすぐに理解できる。当時の体制批判の暗喩であることがなんとなく理解できる作品もあるのだが、殆んど全ての作品が、○○が××をしたということは書かれていても“何故”が書かれていないので、作者の意図が理解できず、その××の可笑しさを無意味に笑うしかない(時として笑えないこともあるが)作品ばかりだった。
で、読みながら思い浮かんだのは吉田戦車の漫画だ。無意味で滑稽、そして残酷な笑いの奥にあるものを読みとろうとしてドツボにはまってしまう・・・。スターリン時代に書かれた小説と彼の漫画を同列に論じることはおかしなことかもしれないが、最後までその想いは続いた。
仮定になってしまうが、ハルムスと同時代の人が彼の作品を読めば、そこに隠されている真の意味がすぐに理解できたのかもしれない。
しかし、そんなことに関係なく、この作品集は充分におもしろい。カフカの作品もおもしろいが笑いの要素はほとんど感じられないのに対し、ハルムスの作品は笑える(本当は笑っちゃいけないのかもしれないが…)。オビに書かれている「本当の前衛は、とてつもなく面白い」という文章は本当だった。
とはいえ、書いてあることは理解できるが作者が何を書こうとしているかが理解できないという点において、この作品集は読んでいて非常に疲れるので、毎日就寝前に少しずつ読むのがいいように思う。