ルナ基地でのブルらとコンセプトとの戦艦争奪戦に続くフルクース軍との攻防と故郷銀河でテケナーと恋人ジェニファーが遭遇する悪夢の様な一大事を描く大長編SFスペース・オペラ宇宙英雄ローダン・シリーズ第412巻。本巻の執筆者は抜群のバランス感覚マールとハードSF路線志向のフランシスです。最初に前巻で驚かされた小陛下復活の件なのですが、本書58頁に「最初の小陛下の死」という記述を発見しようやく疑問が解けてホッと一安心しました。ルナ基地とテラでの戦いはもう少し長引くかなと思いきやマールの2編のみで一旦終了し、後半からは全く予想もしなかったロナルド・テケナーの物語に移行するのですが、その新たなぶっ飛んだ展開には誰もが度肝を抜かれる事でしょう。
『《アイアンデューク》争奪戦』クルト・マール著:‘それ’の命を受けたコンセプトのアソシェンはルナ地下の戦艦《アイアンデューク》を巡ってブルら3人と争奪戦を繰り広げていたが、そこへ交信をキャッチしたフルクース軍が偵察に乗り込んで来る。本編ではブルら3人と内面に密かに裏切り者の女性を宿すコンセプトの頭脳戦の駆け引きの危険でスリリングな面白さが味わえます。そして圧巻は嘗てテラナーと友情を結んだフルクース軍のフアトルの再登場で、その冷静で人間味溢れる行動に敵ながら天晴れと大きな感動を覚えました。出来るならば彼とは次は戦場以外の場所での再会を望みたいと切実に願います。『ハルトの巨人たち』H.G.フランシス著:戦艦《レッドホース》で銀河系を離れたテケナーと恋人ジェニファーに突如として悪夢の様な現象が襲い掛かる。謎の異質存在‘赤い靄’と狂気の如き巨大なハルト人に追い詰められた二人は止む無く旗艦からの脱出の道を選ぶ。本編ではハードSFが得意な著者の本領が思う存分に発揮され、恋人たち二人には気の毒その物ですが、恐るべき試練が次から次へこれでもかとばかりに続きます。味方につければ滅法心強いですが敵に回せば厄介な事この上ない宇宙最強の戦士ハルト人の一派から命を狙われる事となった二人がこの先どう切り抜けて行くのか手に汗を握りながら見守りましょう。
本巻の翻訳者お二方を代表する増田久美子氏のあとがきは、読者の方から譲って頂いたローダン・シリーズ全四百巻を前にして続けていく事の重さを実感された思いと、続いてポルトガル語でタンバリンを意味する楽器バンデイロを習って感じた喜びを生き生きと語られています。本来の道筋を離れて自由奔放に展開するロナルド・テケナーが自らの破滅という最悪のシナリオをも予感する物語の結末はどうなるのか?不運に見舞われた恋人たちに感情移入しどうか無事でと祈りながら興奮の次巻に期待しましょう。