今回の『不死鳥の騎士団』は原作の中でもアクションも多く,思春期の恋もありと,最も映画向きなストーリーであり,映画化に期待していた人も多いはず.結果は,それなりに楽しい作品に仕上がったといえる.ただ,原作を読んだことがない人が,ディテールまで全て楽しめるかと聞かれれば,それには疑問符がつくと思う.原作を読んでない人には,のっけに出てくる婆さんが何者かも判らぬまま,消化不良だけが残るかもしれない.とにかくこのシリーズには,年齢を問わず,熱烈な読者が多い.それゆえ,小説から得たイメージと映画の差異が許せないという評価が増えるのは自然なことである.原文を読むファンなどには松岡女史の翻訳も許せないといきり立つ人も多い.私自身も(英語・日本語両方の)原作の大ファンだが,映画はポッターワールドの楽しみ方のひとつと割り切って楽しむことにしている.僅か3時間強の尺に原作の全てを詰め込むのは不可能だからだ.映画は映画として評価してほしい.その意味では,騎士団がロンドン市内を飛び回るシーンやラストの殺陣など,見る側をぐっと引き込むシーン満載の本作は健闘しているといえるだろう.ただ,本質的に重要だった魔法界の政治性やハリーの思春期の醜いまでの葛藤,そして次回作へつながるダンブルドアの老いといった要素がちょっとあっさり描かれすぎていたのが残念.特典DVDにはカットされたシーンも収録されていると聞くので,それも楽しみ.そう遠くない将来,ラドクリフのイメージが少し薄らいできて,CGなどのコストがぐっと安くなれば,BBCやHBOあたりが原作に極めて忠実なハリー・ポッターのドラマ・シリーズを作ってくれるだろう.原作第一主義のファンはそれまで辛抱してほしい.