ケネス・アンガーはハリウッドの大金持ち有閑バイセクシュアルの映像作家。1947年「花火」、1963年「スコルピオ・ライジング」などの短編前衛映画で知られている。小子はほとんどの作品を新宿にあったアングラ劇場「黙壺子フィルムアーカイブ」で見ている。
本著は1975年にアンガーが著し、1989年に翻訳本(ペーパーバックス、全431ページ)がリブロポートより出された 。
ほぼ1ページごとに写真がふんだんに使われており、極めて資料性の高い本でもある。
単なる興味本意の暴露的スキャンダル本ではなく、“進歩的文化人”たるアンガーの批判的精神による考察眼で全編が貫かれている、一本筋の通った本だ。
とくに胸が裂かれるのが、フランシス・ファーマーの項だ。
舞台出身でインテリ高慢ちきな態度が全ハリウッドから嫌われていたファーマーは、ちょっとした交通違反で逮捕されたことをきっかけに、読むもおぞましい地獄の底に陥れられてしまう。
警察や裁判所で徹底的に攻撃的な態度だったファーマーは最後は精神病院送りにされ、10年間に及ぶ患者からのレイプと薬漬けという合法的拷問によって、最後は無残なロボトミー手術の人体実験の餌食となってしまうのだ。
この余りに無残な女優の運命は、1982年にジェシカ・ラングがファーマーに扮した『女優フランシス』となって結実したことは、映画ファンの記憶に長く留められているが、本著がその映画化の原動力になっていることは間違いないだろう。