アメリカの斜陽が語られているが、その中でもまだハリウッドの映画産業は、優秀で流行に敏感な最先端の人間が集まるところと言えるだろう。著者はハリウッドで働く日本人プロデューサーだ。第一線で働き、豊富な人脈を持つ著者ならではの興味深い内容に満ちている。
これを読むと2009年のWBCにおける「サムライジャパン」の活躍がハリウッドの業界人に与えた影響の大きさに驚く。今、ハリウッドに限らずあらゆるアメリカの分野におけるメインストリームで日本人と日本文化のオリジナリティが評価されているという。業界人が集まるミーティングでは、「日本では今何が流行っている?」が合言葉となっており、日本人に学べという姿勢が非常に強い。
さらには、日本人が意外と気づかない日本の魅力に外人が惹きこまれている。デパ地下を訪れることで、すっかり日本ファンになってしまった映画業界のアメリカ人と反日中国人。寿司、蕎麦といった日本食はもちろん、ビールや、シュークリーム、スーツ、コンビニや喫茶店まで日本製、日本式が受けている。従来、アメリカ人には習慣のなかった、「飲みニケーション」ならぬ、「ドリンコミュニケーション」も流行っている。
重要なのは、日本的精神、コンセプトまで受け入れられていることだ。スタミナドリンクを飲み、集中して根を詰めて作業するという、以前にはなかった変化がアメリカ人スタッフの中に見られるようになった。日本の高校野球並みに猛烈ノックを取り入れる少年野球監督は、抗議に来た親にこう言う。「適当にプレーする子供は適当に生きる大人になってしまう」と。さらには最強スモウレスラー(朝青龍)の真似をして自分に活を入れる格闘家もいる。
本書を読んでもらえれば分かるが、著者の仕事を通じての啓蒙活動は、民間外交官レベルを超えている。是非とも多くの人にこの本を読んでもらいたい。