「川の底からこんにちは」のヒロイン(満島ひかり)は、自分は『中の下』の女だから「ガンバルしかない!」と叫び、「あぜ道のダンディ」の光石研は「『大変だな』なんて、わかりきったこと言うんじゃねえよ!この時代におじさんやってんだぞ!」と啖呵を切る。この『ダンディズム』を本作では『粋』という美意識で貫きます。
監督は落語の世界にインスパイアーされたとインタビューに答えていますが、落語の世界観、デフォルメされたアニメのような描写、オーバーアクトの演者たち。さらに、主人公を演じる仲里依紗が、話が行き詰ると「それじゃ昼寝するぞ」と叫ぶ。こんな妙ないい加減さが物語を進めてゆきます。(笑)
また、監督が好きだという浮雲のシーンは色鮮やかで、理屈でなく雲や風の流れに身を任せて生きる主人公の生き方を象徴しています。
この主人公は、雨の中、濡れて歩いたり、腐ってそうな米を食べたりと、一番優先すべきお腹の子に一番「粋」じゃないことしてます。(苦笑) 母親や妊婦からは、全く共感を呼べそうにないキャラなんですが、でもそもそもコメディに共感もリアルも必要ないとも思うのです。共感やらリアルやらが重要な映画もたくさんありますよ。でも深く考えず頭空っぽにして、ただただ笑える映画も必要。それでいいんじゃないでしょうか。
「川の底から〜」では、おばさんの下着姿。「あぜ道のダンディ」では、突拍子もないタイミングで(童謡)ウサギのダンス。そして、今回は、やはりとんでもない所での出産シーン。
でも、あれで終わるのを『粋』ととるかどうか難しいところ。もう少し余韻が残るように、例えば、エンドロールにおまけ映像つけるとかして欲しかった。