アキ・カウリスマキの「敗者三部作」中、これは最も暗く救いようのない物語である。登場人物の受難を、皮肉な泣き笑いで物語るのがアキの映画だが、「マッチ工場の少女」については全く容赦がないのだ。
看板女優カティ・オウティネンが相変わらず無表情に演じるヒロインは、ささやかな幸福を求めてあがき、結局は信じ愛した者に裏切られてゆく。次から次へと不幸が襲うのは勿論アキの定番とはいえ、ブラックコメディというにはあまりにも悲惨である。結末に至っては絶句してしまう。
アキの作品には、テレビやラジオがよく出てくる。何度か見ているうちに気がついたのだが、「マッチ工場の少女」ではテレビで天安門事件が報じられるシーンが執拗に繰り返されているのである。
社会を変える可能性を信じて抵抗し、国家という巨大な怪物に為す術もなく踏み潰されてしまった人々の姿が、マッチ工場の少女に投影されていると感じるのは私の深読みだろうか。しかし、天安門事件の際に多くの人が感じただろうあの絶望感が、この映画にも漂っている。
アキは自分の主張を声高に表現するタイプの映画人ではない。それだけに、この天安門事件のリフレインは、重い。常に弱者を描いてきたフィンランド人監督の、この悲惨な事件を前にした心中いかばかりであったか。
アキ・カウリスマキの作品中、もっとも強く政治的なメッセージを感じる。個人的には、三部作中の最高傑作である。
裏切られ、踏みにじられ続けたヒロインが最後に試みる抵抗は、恐ろしくも痛ましい。
あれで彼女が少しでも幸せを感じられたのであればいいのだが。