本書は、1809年から1918年までのハプスブルク帝国史を扱っている。しかし、読み進めていくと、本書は初心者向きではないことが分かります。というのは、まずは読みにくいこと。そして、読みこなすための知識がある程度必要になってくるからです(そこで、H.コーン、稲野強他訳『ハプスブルク帝国史入門』(恒文社、1982年)やG.シュタントミュラー、丹後杏一訳『ハプスブルク帝国史―中世から1918年まで―』(刀水書房、1989年)を先に読むことをおすすめします)。
著書のA.J.P.テイラーはイギリスの著名な歴史学者です。また、『第二次世界大戦の起源』(吉田輝夫訳、中央公論社、1977年)を刊行し、「テイラー論争」を引き起こしたことで有名です。
本書は、A)政治・外交を中心に展開されています。その中で活躍した人物たちが生き生きと描かれており、大変面白い!それは、テイラー独特の叙述によって一層際立っています。B)ハプスブルク帝国崩壊については、以下に示している。1)「ハプスブルク帝国の運命は、一八六六年の戦争(=普墺戦争)によって決定されていた」(326頁)とした上で、1879年の独墺同盟締結、ボスニア=ヘルツェゴヴィア占領・南スラブ問題やバルカン戦争を経て、第一次世界大戦の決断が帝国崩壊の決定要因としている。 2) 1867年以降に王朝(とりわけ、皇帝が帝国の領土を維持・拡大したいという考えが多分にあった)、ドイツ人、マジャール人が他の諸民族(特にスラブ諸民族)を支配した。だが、時代を経るにつれ民族問題が激化し、その解決策は連邦制を採ることである。しかし、実際にその解決策が採用されることはなかった。
読みづらい面もありますが、とても魅力ある通史です!