ハプスブルク帝国の通史を扱った書物は、Robert A. Kann, A History of the Habsburg Empire 1526-1918, (California, California Univ. Press, 1974)、H.コーン、稲野強他訳『ハプスブルク帝国史入門』(恒文社、1982年)、A.J.P.テイラー、倉田稔訳『ハプスブルク帝国 1809−1918 オーストリア帝国とオーストリア=ハンガリーの歴史』(筑摩書房、1987年)やE.ツェルナー、リンツヒビラ裕美訳『オーストリア史』(彩流社、2000年)などがあり、その他多くの文献が世に出ています。その中の一つが、本書です。
著者のG.シュタントミュラーは、最近世史、東欧史、南東欧史の専門家として著名の歴史家だそうです。(彼の紹介とその著作リストは、本書226頁に記載されています。)
「第1章 ハプスブルク国家の成立」、「第2章 世界国家の成立」、「第3章 カール五世時代」、「第4章 反宗教改革と三十年戦争」、「第5章 対トルコ防衛戦」、「第6章 スペイン王位継承戦争」、「第7章 マリア・テレジア時代」、「第8章 啓蒙主義、革命、ナポレオン戦争」、「第9章 メッテルニヒ時代」、「第10章 民族問題の成立」、「第11章 一八四八〜四九年の自由主義革命」、「第12章 イタリアとドイツにおける優位の喪失」、「第13章 アウスグライヒとその後の問題」、「第14章 オーストリア・ハンガリーの外交政策」、「第15章 第一次世界大戦と二重帝国の終焉」「終わりに―回顧―」が、本書の構成となっています。
A)各章はよくまとめられていること。B)平易な文章なので、読みやすいこと。C)上記の内容構成からも見てとれるが、政治史や民族問題(ただし、帝国内の少数民族に関する記述が少ない)には触れているが、経済や文化に関しての記述がないこと。D)帝国との関係の中で、他の諸国(フランス、イギリス、トルコ、ロシアやイタリアなど)の動向が分かりやすいこと。以上の点が、本書を読んだ感想です。
ただし、「入門一歩前」として、a)江村洋『ハプスブルク家』(講談社現代新書、1990年)、b)江村洋『ハプスブルク家の女たち』(講談社現代新書、1993年)やc)加藤雅彦『ハプスブルク帝国』(河出文庫、2006年)d)菊池良生『図解雑学 ハプスブルク家』(ナツメ社、2008年)などを読んでから「ハプスブルク史入門」の一つである本書を読むことをおすすめします。