神聖ローマ帝国を中心に、古代から近代までのヨーロッパ郵便史を記した。配達するためにはネットワークが必要になり、より広域にネットワークを維持するには巨大な力が必要になる。その力の源泉として、中世はカトリック教会が、近代には絶対主義王朝があった。また、郵便網は情報網としても機能し、権力者が権力を維持するにあたり重要な役割を果たした。カール5世の全盛期に至るまでに神聖ローマ帝国では、都市領邦から自治権を奪う過程で、郵便を都市から取り上げていった。しかし、皇帝の力が弱まると、新教徒の都市は「旧教の皇帝は信用できない」とまた郵便を始め、国内に皇帝と都市の2つの郵便が並存した。
最近「世襲公務員」と揶揄された特定郵便局長制度が廃止されたようだが、もともとこの制度はハプスブルク朝からあるものだという。従前は1人が発着地を往復していたのだが、ハプスブルクは帝国郵便も始めるにあたり、宿場町の宿に郵便の中継ぎを依頼したことで、急速にネットワークを広げることが可能になったのだという、また、検閲と郵便が表裏一体であったことなど、いろいろな意味でうなずかされる本だった。