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歴史本というと、著者の思惑に左右され、難解な表現が多かったり、色話の多い女性雑誌みたいな安い内容だったりで、なかなか期待するものに出会えないのですが、この本はとにかく、どんな人にもお勧めできます。
著者が、愛情をもってオーストリアやハプスブルク家を語っています。
岩波や中公と比較した場合の講談社現代新書の特徴は「図版を多種掲載し、平易な文章で描く簡明さ」「テーマ設定の目線の低さ」「それでいて読者におもねらない高レベルを保っている」といったところにあるといえます。この「ハプスブルク家」はまさにその特徴を遺憾なく発揮している、抜群の面白さを持つ一冊といえるでしょう。
なんといっても著者の文章の卓抜さは大いに賞賛に値します。例えば次のような一節が登場します。
「この日の主役、皇帝カール五世は秋の陽をあびてまばゆくきらめくま新しい甲冑に身を固め、見事な鞍をおいた黒馬に微動だにせず騎乗して、凱旋将軍のような晴れ晴れしさで、アーヘンの城門をくぐりぬけた。」(86頁)
大学の研究者が筆を執るとえてして衒学的で無味乾燥な歴史教養書に仕上がってしまうきらいがあります。ですが本書は流麗かつ品格ある文章が全編にあふれていて、歴史文学を読んでいるかのような昂揚感をおぼえるほどです。歴史を学ぶことの楽しさを著者自身が強く感じていることが手にとるように判り、それを少しでも多くの読者に伝えたいという意思が込められた文章が次々と繰り出されることに一種の爽快感すら味わうことが出来ます。
長く読み継がれることを期待したい良書です。
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