本書は、ハプスブルク帝国の中核として成長し、文化の香りかぐわしいウィーン、プラハ、ブタペストの三都を歴史、文化(建築、音楽)、味覚(カフェ、ワイン)を切り口にして概観する。第一章が三都の形成史、第二章が三都の建築史上の重要建造物をとりあげる(ウィーン:バロックから分離派へ、百塔の都プラハ:アール・ヌーヴォー、レヒネル・エデンとブタペスト世紀末建築)。第三章は現在の中に含まれた過去:音楽とカフェを楽しむ、として専らウィーンに焦点を合わせ、大音楽家の足跡、著者滞在時の演奏会事情、そしてカフェとワインおよび代表的ウィーン料理等を紹介する。異なる民族の都として各々独自性をもちながら、ハプスブルク帝国の都市同士が影響し合い、歴史と文化が重層的に重なって三都それぞれが人を惹きつける個性を持つに至ったことはよくわかった。旅に誘う本である。
ただ、この本は私のようなハプスブルク帝国の歴史程度の予備知識しかない者には読みづらい。巻末に地図、口絵にカラー写真、そして本文中にも要所にモノクロ写真が挿入されているが、地図にものっていない、写真もない場所や建造物を頭で想像するのは辛い。また、知らない言葉が何回か使われた後に詳しく説明される(例:ユーゲントシュティール、ホイリゲ)。索引があればと思う。旅行ガイドとあわせて読むのが良いかもしれない。