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ハプスブルクとオスマン帝国-歴史を変えた<政治>の発明 (講談社選書メチエ)
 
 

ハプスブルクとオスマン帝国-歴史を変えた<政治>の発明 (講談社選書メチエ) [単行本(ソフトカバー)]

河野 淳
5つ星のうち 3.5  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容説明

「トルコの脅威」が近代ヨーロッパを生んだ圧倒的軍事力を誇るオスマントルコにハプスブルクが取った対抗策とは?データ重視、実力本位、民衆へのプロパガンダ。近代精神誕生のドラマを解明する画期的論考

内容(「BOOK」データベースより)

圧倒的軍事力を誇るオスマントルコから、いかにヨーロッパを防衛するか?最前線に立たされたハプスブルクが取った対抗策―それは情報を収集し、バラバラな諸侯をデータを挙げて説得して糾合する一方、民衆を反トルコプロパガンダで動員することだった。近代政治誕生のドラマを解明する画期的論考。

登録情報

  • 単行本(ソフトカバー): 242ページ
  • 出版社: 講談社 (2010/5/7)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4062584719
  • ISBN-13: 978-4062584715
  • 発売日: 2010/5/7
  • 商品の寸法: 18.8 x 13 x 2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.5  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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8 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By ふぁんどり VINE™ メンバー
形式:単行本(ソフトカバー)
 本書は、ハプスブルクとオスマン帝国の外交史ではありません。オスマン帝国の脅威を最も受けていた時代に、「あの」ハプスブルクがどうヨーロッパ世界を防衛したかを描きます。
 ハプスブルクに興味があれば「あの」ってのがどういうニュアンスであるかはお解りいただけると思います。戦争はからきし駄目で婚姻政策で自領を拡大し、ナショナリズムの時代に家の聖性を支配の源泉にしたあの時代錯誤のハプスブルク。
 しかし一方で情報を重視し、いち早く郵便網を整備していたことは、菊池良生氏が『ハプスブルク帝国の情報メディア革命―近代郵便制度の誕生』で描いたとおりです。また、本書においては、オスマン帝国と対峙していた局面でハプスブルク家が「情報の開示に基づく実証主義政治」を行い、分裂する神聖ローマ(ドイツ)の諸侯から援助を得ていたという、意外な一面が示されています。ハプスブルクには「情報」を武器とする伝統があった、のかな?
 さて、中世の観念的な思弁政治ではなく、正確な情報に基づく実証政治を「発明」したのがハプスブルク家であり、また近代の世界システム(ウォーラーステインが提唱したアレ)を旧時代の地中海世界からもハプスブルクは守ったのだ、と著者はいいます。そして「国家の働きを無視して描かれた歴史は、現実から目をそむけたファンタジー」とまでいいきる著者は、ハプスブルク家を原点とした政治的プロセスに自覚的であることは今日的にも重要である、ともしています。
 確かに「国家というものがなんだか解らない」とかほざいた上にファンンタジー的な言動を振りまき、何もしないまま退場した某国の宰相がつい最近いました。そういう人物をまた選んでしまうのは恥ずかしい。故に、政治について勉強しなければいけないと思いません?(蛇足)
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形式:単行本(ソフトカバー)|Amazonが確認した購入
 本書は、「軟弱で時代遅れ」とされるオーストリア・ハプスブルクがいかに神聖ローマ帝国を束ねオスマン帝国に対抗したかについて考察するものである。そして、「オスマンの脅威」によってハプスブルクが新たな<政治>を発明し、その<政治>が対オスマン防衛を可能にしたと主張する。

 序論「世界史の転換点とハプスブルク家」は、本書の問題関心、先行研究、構成について。本書では、事件・政策に係る議論といった具体的な「政治の中身」として政治を取り上げるのではなく、むしろ議論に正当性・説得力を与える論理的な「政治の行われ方」としての<政治>に注目するという。
 第1章「ハプスブルクの政治における揺れ動くもの・動かないもの」は、ハプスブルクの政治全般について。
 第2章「対オスマン防衛という仕事」は、対オスマン政策について。
 第3章「国境を守るということ」は、人手不足解消のための政策について。
 第4章「オスマンの脅威を印象付ける」は、「民衆」に対して行われたプロパガンダについて。
 第5章「ドイツ帝国議会における情報戦略――『真実』の持つ力」は、帝国議会でハプスブルクが用いた情報戦略について。ここで本書は、<政治>を中世的な「思弁政治」と近代的な「実証主義政治」とに区別する。神聖ローマ帝国において、その領域が広大であるが故に思弁政治が行われていたが、16世紀後半、宮廷軍事局といった情報処理機構の発達により実証主義政治が可能となり、ハプスブルクは帝国議会において情報提供の主導権を顕示し、議論を誘導していったという。
 第6章「クロアチア諸身分との奇妙な論戦――王国を兵舎にするべきか?」は、ハプスブルクとクロアチア諸侯との軍事植民制を巡る議論について。
 第7章「ヨーロッパ近代政治の道筋」は、ヨーロッパ政治史における実証主義政治の位置づけについて。ここで本書は、実証主義政治を「近代性」の指標として位置づけ、「近代政治」と同一視する。そして、各国における実証主義政治の展開を概観し、ハプスブルクの先進性を主張する。
 「結び」は、これまでの議論のまとめと、ハプスブルクによる新しい<政治>の発明の歴史的意義について。

 以下、簡単な批評。
1) 本書は、ハプスブルクの発明した新しい<政治>について非常に明快に論じており、非常に興味深く読めた。また、ハプスブルクの対オスマン政策を世界システム論に位置づけなおし、新たな視点を提供しており、今後の研究が期待できる。
2) 思弁政治と実証主義政治について。1532年帝国議会は、情報不足により具体的な議論はなされず思弁政治の枠内のあると論じている。しかし、帝国諸身分は「より正確な情報」を求めており、情報があれば現実的な議論がなされた可能性がある。すなわち、この時点で実証主義的政治が成立していたとも解釈できる。一方、1567年の帝国クライス会議は、皇帝が「戦争に関する包括的な報告書」を提示した点から実証主義的政治の枠内にあると論じている。しかし、皇帝は休戦交渉を「神の恩恵」としており、思弁政治の枠内にあるとも解釈できる。本書は、思弁政治と実証主義政治を両者の対立、あるいは前者から後者への移行として描いているが、むしろ両者は常に並存していたのではないだろうか。
3) ハプスブルクはオスマンという「共通の危機」を主張することで帝国諸身分の援助を得ようとしたという。しかし、この場合の「共通」とはなにか。この共通性はキリスト教世界という思弁的なものなのか、それとも神聖ローマ帝国という国家間関係が課す連帯責任といった現実的なものなのか。
4) プロパガンダについて。本書は、実証主義政治と対に産み出されたものとしてプロパガンダを論じている。しかし、プロパガンダという概念の歴史は古いようで新しい。古代アテネの修辞学にまで遡ることもできるし、国家イデオロギーの流通の観点で言えばロシア革命を始点として始めることができる。しかし、本書におけるプロパガンダ概念は曖昧である。中世において民衆の想像力は歴史研究の大きなテーマの一つでもある。この点に関しても本書は考察していない。
5) 「近代政治」について。本書は、実証主義政治を近代政治とみなしている。しかし、「近代」そのものについてほとんど議論しておらず、大まかに近代とは現実的な合理性に基づくもので、実証主義政治の発明とともに始まるとされる。では、実証主義政治以降の近代政治には何の画期も存在しないのか。近代政治は自由や平等といった抽象的な概念や、経済的な発展と関係がないのか。近代政治には思弁政治の余地はないのか。ジャン・ボダンは、国家主権を定式化した一方、魔女狩りを推進した事で知られている。この点をどのように説明するのか。近代を俎上にのせることなく、近代というブラックボックスのなかで議論することは、複雑で入り組んでいるはずの歴史を単一の直線的なものにしてしまう危険があるように思う。この点において、第6章は示唆に富んでおり、興味深い。
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