著者によれば、「ハビビ」とは、アラビア語で「身内の仲のいい関係」のことだという。著者が旅してきたインド、エジプト、イラン、モロッコ、シリアなど、西アジアでは、「ハビビ」優先の姿勢が、何よりも徹底しているようだ。
つまり、「ハビビ」な関係と「ハビビでない」関係の二項対立。日本語でいってみれば、「ウチ」と「ソト」の関係ということだろう。
私もインドやネパールは、バックパックーとして旅したことがあるが、著者と同じような経験もしているし、似たような印象ももっている。
カネがなくてもハッピーに見える発展途上国の側から見ると、日本や日本人は世界的にも例外的な存在だろう。あまりにも素晴らしすぎて、逆にストレスがたまる日本社会。
しかし、ちょっと引いて考えてみると、日本人だって「ウチとソト」を無意識のうちに区別しているし、いわゆる「世間」とそれ以外の区別もかなりハッキリしているのではないか。
旅人としての著者の視線は当然のことながら、アウトサイダーとしての「観察者」の視線であって、インサイダーとしての「ハビビ」のウチ側の人間の視線ではない。現地人と結婚して「ハビビ」のウチ側に入った日本人女性の話とは根本的に異なるものだ。
旅人の眼からは、「ハビビ」な人たちはハッピーに見えるが、なかにいるとうっとおしいこともあるのではないだろうかという気がしないでもない。たしかに、日本もうっとおしいが、日本以外だって、それはそれなりにうっとおしいのではないかとも思うのである。
ただし、問題は、日本の場合、家族関係が西洋人並に崩壊してしまい「ハビビ」ではなく、会社の人間関係も「ハビビ」ではなくなっているということだろう。これはもはや不可逆的な流れなのだろうか? 「ハビビ」な家族関係へ戻ってゆくのは、もはやたいへん困難な道ではあるが、ハッピーになるための一つの方法であるかもしれない。
著者は自分の経験や観察を補強するために、実に多くの本から引用を行っている。個人的な経験を知識に変換するための方法として旅は重要である。この本に紹介された数々の本を読んでみるのもいい。日本を異なる視線で見ることができるから。
まあ、バックパッカーの旅行体験記として、気楽に受け止めれるべき読み物である。
「アジア、イスラム」というのなら、インドネシアやマレーシアはどうなのだ?、とツッコミは入れたいところだが・・・