こちらはほぼ50年振りに復刻された、楳図かずおがまだ恐怖マンガを手がける以前の、20代の頃に描いた短編を7本集めたもの。
巻末の楳図のインタビューによると、幼い頃、母親によく昔話や怖い話、不思議な話を聞かされて育ったというが、おそらくそれがベースとなって生まれた「初期幻想民話短編集」だ。
こう書くと、いつもの楳図ならではの恐怖度やホラー度が低くて面白くないのでは?と思ってしまうかもしれないが、そんなことはない。
後の楳図マンガへと通じる「楳図らしさ」がしっかりと花ひらいていて、なおかつ抒情性たっぷりの純朴なタッチの描写で、じんわりと感動にもひたれるのだ。
今回これらの作品を初めて読んで、楳図の話作りのウマさに改めて驚かされた。
とくに本のタイトルにもなっている「ハナ狐」、そして「目なし地蔵」。
せつなくも、あたたかい幻想譚を短いページにまとめているところはさすがだ。
もちろん他の収録作も、何度も何度もくり返し読んで、心動かされ、そして涙を流したくなる名作ばかり。
とても粒ぞろいの、いつまでも大切にしたくなる一冊だ。
ただし、この本、ネックとなるのが、定価が2800円もするところ。
しかしだからといって、買うのをためらってしまうのはもったいないと思う。
確かに、本文約250ページ中、90ページ近くが原本どおりのカラー・ページで収録されており、これ一冊を作るのにかなりのコストがかかっているはずなので、値段が高くなってしまったのは仕方がないと想像がつく。
でも、それを売りにするのではなく、この本に詰め込まれている楳図かずお描くところの「民話」の素晴らしさに、ほぼ半世紀振りに触れることができるのだから、決して高すぎる買い物ではないと思う。
今まで読みたくとも読めなかった作品たちとの出会いにこの値段を払うのは決して惜しくはないのでは。