あまりのワルぶりに、『矯正』の為に無理矢理、破天荒で、あたりかまわず
鉄拳を入れまくる師匠のもとに入門する羽目になってしまった主人公竜二を
中心に、一話完結で上方落語の演目にまつわるストーリーが展開されるとい
う、いわゆる『タイガー&ドラゴン』方式ではあるが、そこに楽屋や高座で
のトラブルから殺人・誘拐までを扱ったミステリーを折り込む事により、
主人公の単なる成長物語としてだけではなく、物語に起伏を富ませている。
また、上方落語、ひいては落語そのものを知らなくても、読み終える頃には
頭に噺が入るかと思うので、『時うどん』≒『時そば』、『たいらばやし』
≒『ひらばやし』といった、上方落語と江戸落語との対比をしてみても面白い
かも知れない。
主人公・竜二は稀代のワルだったという設定だが、入門直後からは古典落語の
面白さに少しずつのめりこんでいき、挙句の果てには、自分が解いた事件の
真相を語る際、敢えて師匠である笑酔亭梅寿に花を持たせる姿は一見、眠らせ
た毛利小五郎を利用して犯人を追い込む江戸川コナンを連想させるが、本当の
ところは竜二自身が僅かの間に丸くなり、つつましさを身に付けた結果である。
出来れば、入門直後に彼が急に『ある程度の大人』になったプロセスをもう
少し描いて欲しかったと個人的には思っています。