あまりに有名な話を、しかも劇場公開当時の私鉄グループ系企業色たっぷりの宣伝をしたものだから、名匠の新藤監督脚本作品でありながら不運にも「企画モノ」扱いされた′87年公開の作品。
実のところ日本映画の名作として挙げられても良い上質な作品です。
スタッフ、キャストも最高の仕事をしています。
他のレビュアーの方も仰る通り、衣装や風俗や街並みなどの時代考証も正確。
特にラストの雪振る中で上野博士と「再会」して幸せに瞑るハチのシーンの直前、ハチ自身の主観カットを横に遮って行進していく軍列・・・古き良き庶民の時代から暗澹たる戦争の時代へ突入していく気配を残して映画は終盤を迎えます。
もう本当に素晴らしく心憎い演出です。
エンディングテーマが’80年代のニューミュージック系の楽曲だから違和感が無くもないですが、ハチの心情を代弁してるかのような曲なので、あながちミスマッチではありません。
もっと質的に評価されてよい映画。
ハリウッド・リメイクされることが良いのか否かはさておき、リメイクに相応しいと認められたポテンシャルを持った映画であることは、見直される良いチャンスだと思います。
リチャード・ギアの上野博士も楽しみ。
でもその前に、このオリジナルを改めて再確認しておきましょう。
追伸:
渋谷好きな方はこの映画を観て渋谷を更に好きになるはずです。
今でも渋谷の街にそこはかと流れる庶民感覚。
昼夜問わず騒がしいけど何故か居心地が良い今の渋谷は、この映画の中の「渋谷驛」周辺のアットホームさから連綿と引き継がれていることが判りますよ。
実際の上野博士の邸宅の玄関は現在の東急百貨店本店のブルガリがある辺りにあったとのことです。
私事ですが、公開時に今は亡き東急文化会館の映画館を当時の彼女(というか今のカミさん)と後にして、反対側の北口に立っているハチを撫でながら「お前は本当に偉い子だったんだな」とわざわざ会いに行ったことが懐しく感じられます。