本書で言及しているポリティカル・コレクトネスの問題から、非日系のアメリカ人がハシムラ東郷について中立的に論じることは難しいでしょう。本書では日本人だからこそなし得た、意義ある研究がまとめられています。
もちろん、本書の内容を現代のアメリカ社会にそのままあてはめることはできませんが、異文化に対するアメリカ人の対応を知るうえでは、現代でも大いに参考になると思います。ただ一つ気になったのは、「ハシムラ東郷」がアメリカ人・アメリカ社会をも風刺するものとして当時でも一部では理解されていたにもかかわらず、なぜ同じウォラス・アーウィンが正攻法で日系社会を描いた『日ノ本』がアメリカでも日本でも排日小説としてしか読まれなかったのか(時代背景だけが原因だったのか)、なぜアーウィンがその誤解を解かなかったのか、あるいは解けなかったのか、という点です。
第二次大戦前のアメリカ(特に西部の各州)で中国人や日本人などのアジア人が排斥され、戦争中、日本人や日系人は強制収容されていた、ということさえ認識していれば、特別な知識がなくても気軽に読めると思います。