ほかの「ハシズム」関連本とちがうのは、この本が「遠吠え」に終わっていないことだと思った。
たとえば、橋下氏からは「役立たずの学者」と名指しされている中島岳志さんの論考(第一章)は、ひじょうに落ち着いたトーンで橋下氏の「手の内」を解明していく。そして、「冷静な眼を養ったうえで(略)私たち国民の方が熱狂に乗ってはなりません」という。
また、雨宮処凛さんは、橋下氏について直接には言及せず、ある集会で介護士の待遇改善に反対し、老人の生活保護をカットすべきだと主張する人たちが何人も現れたエピソードを紹介している。
そして、池田香代子さんは、みずからを「独裁への道の敷石となる者」として自己批判(?)することで、「わたしたち」がハシズムを生みだしているのだ警鐘をならす。
そう、モンダイはもはや橋下氏の言動のみにあるのではなく、「クソ教育委員会」や「役立たずの学者」と権威や権力を叩く姿に喜んでいる私たち自身にあるのだと、この本は言っているように思う。
もちろん、この本のなかにも「遠吠え」はあるし、兵庫のおじさんのように皮肉たっぷりの論考もある。しかし、全体を通して伝わってくるのは内なるハシズムと向かい合うためのヒントだ。
あと、「タイトル変更の舞台裏」というあとがきがいい。
中島氏のことをあまりよく知らなかったけれど、「こういう考え方をする人なのか」と、彼のほかの著作も読んでみようかという気になった。
憲法違反とも言われる教育基本条例や、当選時の会見が省略なしに全文掲載されているのもプラス評価。
上野千鶴子さんや八木啓代さんといった人の書き下ろしが読めるのも得した気分。
ただ、いくつかのコメントがネットでも読める点だけ、星ひとつ減点しました。