Sly Stoneのソロ名義でのアルバム"High On You"。だが、実質上"There's a Riot Goin' On"の時からほぼサウンドプロダクションは彼一人で行っていたし、メンバーとの確執も深かった。今作はFamily Stoneのメンバーもこれまでのように参加しているが、それ以外のミュージシャンの名も多くある。次作"Heard Ya Missed Me, Well I'm Back"で名義を再び"Sly & The Family Stone"に戻すが、オリジナルメンバーがSlyとCynthiaの2人のみとなってしまう。そしてSlyが持っていた魔力が失われるのもこの"High On You"というアルバムから。
これ以降の彼の作品はとにかく評価が低い。ただ、それはSlyというアーティストだからこそ在り得た批判であり、純粋に音楽を聴いてみてこの"High On You"は決して出来は悪くないアルバムだと僕は思う。楽曲の質も高く、吹っ切れたような弾けたファンク溢れるサウンドが聴ける。ただ、何かこれまでリスナーを強く惹き付けていた魅力はさっぱりと消えてしまったように思う。
変則的なリズムを重ね合わせ、緻密なバンドアンサンブルを形成し、そしてメロディラインとの関係性を上手く表現するSlyのアプローチは変わらない。オープニングの"I Get High On You"は久し振りにアッパーなノリが心地良いファンクナンバー。続く"Crossword Puzzle"もハイなテンションで繰り広げられる多彩なアンサンブルが見事。そして3曲目の"That’s Lovin' You"は美しいバイオリンソロが目立った、メロディアスなナンバー。こうして一曲毎聴く分には全然水準をクリアした楽曲で満たされているのだけれど、どこかに明らかな物足りなさを感じてしまうのは、これまでの楽曲に存在した謎めいた悪魔的な深みが足りない為なのかもしれない・・・。