頭を低く保たないと常に狙撃される。満足にひげも剃れず、十分な戦闘効果が見込めない時はひたすら狭苦しい塹壕の中で時を過ごさなくてはならない。塹壕は地上より比較的安全な場所であるが、直撃弾が当たれば、人間はただの肉塊となり、運が良くても身体の一部がなくなっている。このような危険に晒されなくては行けない場合でも、お偉方は恐らく安全なところで好戦的な演説を行っているのだろう。漏れ出した体液に浸かった肉体の描写や肉体の一部を失った兵士達の最後の描写など戦争を知っているものしかなかなか描けないものが描かれている。平和呆けは平和主義者だけのものではない。このような戦場の実状を知らない好戦主義者もまた平和呆けなのである。平和呆けに献上したい一冊である。