大学一年のときに「存在と時間」が一巻本で刊行され、これを哲学科の同級生が一緒に読もう、但し原書を中心にと誘われて、試みるも輪読会全員で挫折。その後カントや現象学のゼミナールを経て、かなりドイツ哲学の基本を習得してから、再挑戦したのは40歳を超えていたが、このときは流石におぼろげながら、問題構制は的確に判った。その後、フーコーやデリダの著書にも多大は影響を与えていることが実感して理解できた。ハイデガーを知の巨人と呼ぶに相応しい知的道標はまさに『存在と時間』であり、彼の知的営為全体としての全集は現在刊行中で、いまだに完結しない。その途上の哲学が進行する有様を、最初に高田珠樹が日独の思想史的な影響関係を踏まえながら、日本でもハイデガー受容史とその解釈史をインタビューの形で応えている。
本書はハイデガー生誕120年を記念した入門書である。この哲学者を精確に読み込むための著書解説に始まり、戦後フランスで影響を受けた哲学者達(フーコー、レヴィナス、メルロ・ポンティ、サルトル、デリダ)のの受容とその関係性を簡潔に描き出した小論で構成されている。他にもハイデガーに直接教えを受けた三木清、和辻、手塚富雄、田邉元と久松真一のエッセイを収める。日本とフランスで、如何にハイデガーが人気のある哲学者であるかを説明した編集の視点が優れている。
これからハイデガーを読もうとする人も、かつて読んだベテランにも魅力的な編集である。彼の解釈につきものに難解さを可能限り排除した編集が素晴らしい。