さすが、我が国におけるハイデガー解釈の第一人者。ハイデガーの思想的背景を、彼のアリストテレス解釈やニーチェ解釈を織り交ぜながら、縦横に解いてみせる。解らないところは解らないというところも、第一人者の貫禄である。ハイデガーが追求した「存在」の概念に焦点を当てた構成で、彼が、自然を可変な材料としてとらえる西洋形而上学の根本を根底から覆し、存在を世界内で開示されるものとして提示することを企てた、そのいきさつがよくわかる。その意味で、ハイデッガーが晩年踏み込んだ芸術論のありようは注目に値すると思う。ハイデッガーがナチスに加担したことと彼の思想の相関性については、彼の自然感とナチスが称揚した「血と大地」との関連が示唆されるが、どうしても隔靴掻痒の感を免れ得ない。やはりよくわからないということなのだろう。これを読んで、ハイデッガーを中心に、西洋哲学を攻めてみるのがよさそうだという気がしている。細谷貞雄訳の原典はまずまず判りやすいから、そっちを先に読んで、これを読み、また戻ってみると良いかもしれない。