量子力学の基本原理であるハイゼルベルグの「不確定性原理」について、日本人の小沢正直 名古屋大学教授(本書が書かれた頃は東北大学教授)が新たな不等式を提示しているということはなんとなく知っていましたが、それについての説明を試みています。
とはいえ、本の大部分については量子力学の創設から量子力学の確率解釈であるコペンハーゲン解釈を巡る物語に費やされています。
量子力学の中核的な基礎理論でありながら、古典物理学者たちが違和感を感じていた部分であり、その不等式自体の問題点を明確にするためには必要なことだと理解できますが、小沢の不等式を直接的に扱っているボリュームを考えると、少々アンバランスを感じるかもしれません。
しかしながら、その記述は非常に丁寧で、量子力学の黎明期についての出来事が理解しやすくなっています。
アインシュタインが、量子力学には理論的に不備があるとしていろいろな反論を試みたのは有名な事実ですが、一方でその量子物理学者たちを積極的にノーベル賞に推薦していたという事実はあまり知られていないのではないでしょうか?
そんなこともあり、このようなボリュームも量子力学自体の理解のためには、必要な記述であると思います。
小沢の不等式については、これからの観測技術によって確かめられていくことだと思いますが、昨年ノーベル賞を受賞した小林−益川理論も正しいとは言われつつ巨大加速機の開発とそのパワーの充実、そして観測の精度が上がってきて、35年を経て理論が実証されてきたことを考えると、その不等式の正当性の実証にはだいぶ時間がかかるような気もします。
それでも、日本人が物理学の応用分野ではなく基礎分野に貢献するというのは、非常に画期的なことであると思われるので、その結果を気長に楽しみに待っていたいと思います。
量子力学の創世記を理解するのに、もってこいの一冊だと思います。