惜しまれながら休刊した「ADLIB」誌に連載されていた角松敏生のインタビュー集。商品表記にない「Vol.1」がジャケットにしっかり印刷されているのは全98本のインタビュー中今回は50本で、残り48本+αは「近いうちに」続編で刊行したい、という意味のようです。
意表を衝かれたのはこのインタビュー集がCDブックというメディアで発売されたこと。デビュー30周年オールカラー本も刊行されるし、差別化を図ったのかと思ってジャケット裏を見ると「PDFデータはPC、iPadで閲覧できます」。ああ、隔世の感。でも最近の読書スタイルってこんなものかも知れない。あれっ、印刷できるみたいだけど、あのーいいんでしょうか、と戸惑いながらページを繰る。
どうもオジさんは戸惑ってしまいます。
冗談はさておき、本書はいつもの詩と曲ではなく、文字という強い力で角松氏が発信するメッセージ集です。なぜ強いかと言うと、話し言葉はそのまま宙に消えるけれど、文字は残り続け、読む人に様々な影響を与えるから。しかもこのコラムは音楽は言うに及ばず、文化芸術趣味教養の隅々に及ぶ角松氏の森羅万象世界。傍らで角松トークを聞いているかのように読ませる構成の妙と相まって、その話題の豊富さ、深さは読者を強く惹きつけます。
個人的に影響を受けたのは、あのプロデューサーが手がけたアルバムなら、このアーティストが参加した曲なら、きっと好きなサウンドに違いないと判断するレコードの選び方。出典を思い出せず申し訳ないけれど、角松氏は確かこれを「クレジット聴き」と呼んでいました。私の場合一例を挙げれば、”角松敏生に出会わなければ友成好宏や青木智仁を知ることも無く、ジョー・サンプルを聞くことも無かった”という「美しいつながり」(笑)。そして多方面にわたって活躍する角松バンドでおなじみ、名うてのアーティスト達が参加したアルバムを見つけたら「じゃ聴いてみよう」。そんな風に自分の好きなジャンルがじわじわと広がったと思っています。
角松氏の折々の言葉や思想が、作品にどのように反映されているのか、ランダムに読みながら、これまでの作品を改めて聴いてみるのもいいかも知れません。そして本書はこの興味尽きない良質のコラムを長きに渡り掲載してきたADLIB誌が確かに在った、という記録でもあるのです。
Vol.2発売は「1」の売上次第なんてことの無いように願うばかりです。