今ではインテリ系司会者というイメージしかないだろういとうせいこうの処女小説。小学生の主人公とその仲間たちは、「ディス・コン」のソフト、アクション・ロールプレイング・ゲーム「ライフキング」に夢中だ。だが、「ライフキング」には隠しヴァージョンとして「ノーライフキング」という幻のヴァージョンが存在するという。主人公のまことたちは、「ノーライフキング」の存在を追うことに夢中だが、その途上で奇怪な事件に巻き込まれていく。
おそらく、解説をつとめている香山リカなどリアルタイムで読んでいた読者らよりも、現代の読者の方がこの小説に驚くのではないだろうか。というのも、約20年前に発表されたこの小説の世界観、設定が、きわめて今日的だからだ。子どもたちが自生的なネットワーク(ツールこそ備え付けの電話だが)、真偽不明の噂、そして何か起きたら「ゲームが悪い」ということで片をつける風潮…。とくに子供たちが自発的に作り、情報交換を行っている様は、今でいうところのTwitterやフェイスブックを彷彿とさせる。
また少年たちが「ディス・コン」というゲームの中に立ち上がるサイバー空間で躍動するそのモチーフは、ウイリアム・ギブソンの『ニューロマンサー』を初めとするサイバーパンクの影響がある。しかし、今作の優れていたのはそれらモチーフを「現代日本」の少年の小学校、塾といった生活空間に落とし込んだところにあるだろう。このあたりは、この直後に発売される糸井重里の『マザー』を思い起こさせる。あの作品もそれまでのRPGが無意識に踏襲していたヨーロッパ的な世界観(騎士でお城があって…云々)から自由になり、現代日本に舞台を移したことが一つの功績だった。そしてそれが、後のポケモンに受け継がれることになる。