家族から捨てられた男と、家族のしがらみから抜け出せない男の友情ストーリー。悲痛な物語なのに、どこかユーモラスで不思議な手触りのドラマでした。
裏社会の下っ端同士の二人の青年が共有するのは、捨てたくても捨てきれない家族への思い。亨は自堕落な妹や病気の甥、痴呆の祖母を抱えて身動きがとれず、「いっそ家族などいなければ」とさえ願うことも。
一方、ヒョングは親から捨てられ家族の意味さえ知らずにいるが、それでも僅かに残る母の記憶を心にしまっている。そんな彼らが互いの孤独を知り、分かり合っていく...。何もかも違うけれど、どうしてか理解できてしまう、そんな人間がいるんだろうな。
特に、印象的なシーンは、あがた森魚演じる怪しい雑貨商に「これを飲んだらお帰り下さい」とお茶を差し出されたときの、妻夫木聡の表情アップ長回し。そして、元カノ(貫地谷しほり)と決定的に別れが決まって段々と変わっていく表情。
白眉は、亨がカラオケ大会に飛び入で、PUFFYの「アジアの純真」を歌うところに、ヒョングが絡むシーン。「チェイサー」では心がない殺人鬼を演じたハ・ジョウは、このなんとも情けなくも心優しい男も似合っていた。ここで、八方塞がりのふたりの不思議な友情が固まる。
そして、ラストの一連のファンタジーのようなシークエンス。他にも、言葉はないが、その語らない表情や背中や空を見上げる視線など、深読みできる画、等々。
渡辺あやの脚本とあって、何気ないエピソードの使い方、つなげ方が上手いなぁ、と思う反面、心情表現のナレーションが多いのが少々気になった。また、チスの父親が人違いで、がっかりさせた後、簡単に本物を見つけちゃったり、ラストの亨の登場の仕方とか、ご都合主義的かなと思うところもありました。
でも、ちょっと間違えばただのシリアスで悲しく怖いだけの映画になってしまうところを、独特の空気感で普遍的な物語に仕上げたのは流石です。恋愛じゃない物語りも描けるじゃないか。