公開当時、そこから多くのメッセージを受け取った記憶のある作品。今年劇団四季の55ステップスの中でも『トプシー・ターヴィー』が採り上げられており、再び観たいと思っていた。この曲目が持つ特別な意味、それは曲調の持つ明るさとは裏腹の歌詞と映像の毒々しさにある。見かけのグロテスクなカジモドを嘲笑する世間と知らなかったとはいえ彼のそうした姿を曝けださせてしまったエスメラルダの悔悟。そして彼女は本当に自分がすべき何かを彼から学び、カジモドも彼女を守ろうとする。ストーリー全体からは『レ・ミゼラブル』を想わせるヒューマニズムの持つ力強さと希望、そして何よりもどんな相手であっても差別することは決して許されない、との人間に対する尊厳を強く感じさせる。法という武器(=建前としての正義)を手にする嫉妬に狂ったフロローの姿は自らの地位と立場を悪用する人間の愚かさそのものである。それは1つの価値観を絶対視し、世界を束ねようとする行為に対する警鐘とも映る。エスメラルダとカジモドの恋は実らないが、カジモドは1人の尊厳ある人間としてパリの街で生きていくことを自らに誓い、そしてパリもそれを受け入れることを暗示させる終幕は涙無くしては観られない。未来を創る子供達には勿論、大人達にも是非観て欲しい作品である。
英語版でのトム・ハルスの表現力がすばらしいことはもちろんのこと、日本語版の吹き替えにあたった石丸幹二・保坂千寿・芥川英司・光枝明彦・今井清隆・佐川守正は今、劇団四季を離れたが彼らがこの作品で遺した足跡を消すことはできない。何れの日にか、このメンバーで舞台化されることを望む。