実は本放送時に見逃してしまい、私自身が北海道を離れるのを機に、どうしても観たくなって、DVDを購入して観ました。
「ノースポイント」シリーズをこれですべて観たことになるわけですが、私は、この「ファームサイドソング」がいちばん好き。
面白いかどうか、というより、「好き」。これはそういうドラマだと思います。
舞台は北海道……空知地方の小都市・滝川市。
劇中、滝川の街の名前は出てきません。出てくる地名は、上川地方の有名すぎる丘の町・美瑛、そして港町・函館だけ。
けれど、おそらく滝川に住んでいる人も、滝川をいつも通り過ぎている人も、街の名前は知っていても行ったことがない人も、このドラマを見れば、「こんなにきれいな場所なのか」と思うはず。それくらい、美しい風景の中で、日常が進んでいきます。ある意味、非日常的な舞台で。
ドラマに劇的な盛り上がりはありません。
登場人物たちが感情を激しく高ぶらせて、舞台劇のようなセリフのやり取りをすることもありません。
畑仕事をしていたらトラクターが故障して、ついつい畑の上でまどろんでしまったり、農作物の仕分けをぶつぶついいながら家族でしたり、夜の茶の間で、主人公がぼんやりしたり、描かれるのは主人公の日常です。
日常がふと非日常に変わるのは、恋が始まるから。
控えめで、でもひたむきな感情が、まさに北海道の夏の空気のように詰まっています。
私が好きなシーンは、橘実里と大森南朋が、農機具に乗って農道を行くシーン。何のことはないシーンなのに、空の色、草の色、木々、二人の表情、そして音楽、どれも素晴らしくて、それだけで涙が出そうになります。
主演の橘実里さん。
いい意味で垢抜けない、ちょっと不機嫌そうな表情からこぼれる笑顔がかわいらしく、「農家の娘さん」役がよく似合っています。この素朴さがなければ、このドラマは成立しないに違いありません。
そして、中島役の大森南朋さん。
木訥とした農機具整備の「お兄ちゃん」がこれまた似合っています。不必要なことは一切しゃべらない、けれど何を考えているのか顔を見ればすぐわかる、そういう木訥さが溢れています。NHKドラマ「クライマーズハイ」で演じた敏腕記者とはずいぶん雰囲気が違います。
もしかしたら、北海道のどこかで、こんな恋があったのかもしれないな。
滝川かもしれないし、中標津かもしれないし、静内かもしれないし。
でもこのドラマは滝川だから成立したんだと思います。北海道でなければ、成立しなかった、そう思います。
監督は、「北海道の風景を見せようとは思わなかった。北海道でなくてもいいと思った」というコメントをしていましたが、結果的に、「北海道・滝川だからこのドラマが出来た」と思わせる作品になっていると私は思います。
ささやかなドラマを見たいと思ったら、本当におすすめです。
最後に。
なぜジャケットの橘実里さんの写真がこれになったのか、ちょっとだけ疑問、かな?