作者の未来史シリーズ中唯一の長編だが一見おとぎ話的.西暦150世紀頃,惑星「ノーストリリア(オールド・ノース・オーストラリア)」では,病気の突然変異羊からとれる長寿薬「ストルーン」によって財をなした牧場主が堅実に暮らしていた.主人公である「没落農場」の跡取りロッド・マクバン151世という少年は,ノーストリリア人が普通に持つテレパスの能力が弱いため,ある官僚に命を狙われる.これを逃れるためにコンピュータの指示に従って牧場の蓄財を投資して地球を丸ごと買ってしまったことから始まる冒険譚が話の本筋.簡明な語り口に上級の言葉遊びと含蓄を込めた物語はほのぼのとした読後感を残すが,生者と死者の差は何かを考えさせる幕切れが典型的に示すように,精読すると単なるメルヘンを越えた作品であることがわかる.