「若者の移行研究」とか「青年期研究」とか言われる領域が、ここ数年賑やかになってきました。若者たちが直面している仕事や生活上の問題が、かれらの”緩さ”のせいではないことも、次第に共有されるようになってきています。
本書の面白いところは、その対象者の多様性と特異さでしょう。専門学校生、自転車メッセンジャー、引越し業者、請負労働者、そして高卒女性たちの生活世界。そのユニークなフィールド自体が大変興味深いと思います。
ですが、その上でもう一つ重要なのは、「社会空間」というキーワードです。かれらは社会的・構造的に形作られた問題を抱えてはいる、けれども、それだけではない。かれらは自分たちの「文化」を作ろうともしているというのです。しかもそれは「文化」を作ればいい、と手放しに評価できるものでもなくて、やはりかれらの社会的条件のなかで見出されなければならない。
このパラドキシカルな理解から見えてくるものが、ますます問われてくるのではないでしょうか。その意味で「社会空間」という本書の視角は、近年盛り上がりを見せる青年問題にとって、新しい議論の土俵を開きつつあるように思いました。