映画化の賛否はどうあれ、映像でしか表せない美しいシーンというものがあるので、それだけで価値はある作品だと思う。
私にとって、それは雪の舞落ちる山奥の療養所でのシーンだった。
直子が語る。
「もし私がこれからも濡れなくってセックスできなくなったとしても、あなたはずっと私といられるの?」
渡辺がそのとき哀しく口角を持ち上げて(しかし優しい瞳で)言う
「僕は本質的に楽観的な人間なんだよ」
雪がしんしんと降り注ぎ、それが二人の最後の再会となる。
言葉だけでは表せない感情が、白一面の世界にかすかな温もりを投げかける。そしてその温もりはどこへも行き着くことなく、雪原の中に永遠に閉ざされる。
このシーンだけで、私は観てよかったと思っている。
全体的に言葉の数が多すぎるし、数々の美しいエピソードは削り取られているうえ、ラストはまるでバカみたいだが、映像でしか表せない機微を発見する面白さがあるので、一見の価値はある。