男女の電話における会話のみで成立している長篇「もしもし」(白水社以下同)、本文と脚注の主従がテレコになった「中2階」など、今度はどんな新しい小説の地平を見せてくれるのか、とっても楽しみな作家ニコルソン・ベイカーの最新作である。今回の主題は「こどもの世界」。こどもの視点というフィルターを通すとささやかな日常がワンダフルランドになっちまうとは・・・! 9歳とは微妙で繊細な年齢である。少しずつ世界の仕組みがわかりかけているけれども、キュートなあどけなさもまだ存分に残っている。岸本佐知子氏の翻訳文章を数ページ読んでいただければお分かりになると思うが、ちょっとした言葉の間違い、勘違いなど、いかにも9歳の少女が書いたかのような、とってもリアルでお茶目な文体となっている。ノリーの語るお話にいつまでも心地よく耳を傾けていたい。かつては自分もワンダフルランドの住人であったことを思い出せるかも知れないから。