全く期待せずに、ただ往年のスネークマンショーで育った一人として観た。が、感激。。。誰に薦めればいいのか分からないが、誰でもいいから観てほしい。
ノミ本人の映像は決して多くは無い。しかし、(おそらく監督の意図的に素材映像を選んだのだろうが)普段のノミがいつもサングラスをかけていて、メイクアップするときにだけ彼は目を見せている、その目の美しさに驚く。ピーター・ガブリエル、フィッシュマンズの佐藤の目と同じ輝きを見てとることができる。
生前の関係者たちのインタビューがまた妙に生々しい。ノミが「ゲイの癌」というとんでもない誤解をされていたエイズに侵されたとき、彼らの誰もがノミのもとを去ったことを隠さずに証言していることが静かなショックを積み重ねていく。誰も泣いてはいないが、「ノミのレコードを聴くことが出来ない」という証言にその涙を聞いてとることも出来る。本編最後に現れる映画の台詞「僕たちは出会うのが早すぎたのだ。でも、きっとそれはまた戻ってくるだろう」という一節が一層の感激を呼ぶ。日本でノミを支持し続けていたスネークマンショーの桑原茂一たちの証言がないのが残念ではあるが。
証言集として感動して、特典映像を観ればフルレングスであの名曲「ザ・コールド・ソング」をオーケストラを従えて唄うノミの姿。その何と儚げなことか!この映像だけでも観る価値、買う価値がある。ほとんど一般的に知られていなかった「カウンターテナー」を唄う奇天烈な男が、クラシックから黙殺され、ニューウエイヴから愛され、最後にクラシックとニューウエイヴの壁を破壊し、その壁の瓦礫の下で一人で死んでいった。その後、エイズは世界に広まり、少なからぬ誤解も解けた(もちろん全ての誤解が解けたわけではないにせよ)。音楽の壁も壊れた(全ての音楽の壁ではないにせよ)。もし、ノミがいなかったら、しかし、誤解を解くべききっかけも、壁を壊す力も産みだされなかったかもしれない。
「どうか私が再び死に至るほど凍っていくのを許してほしい」〜The Cold Song