アメリカのSF界に君臨し特異な作風で人気を集めた異能の鬼才ヴァンスの久々の作品紹介です。本書は最初「地球のたくさんの脳」の題名で発表された当時は、異世界ではなく地球を主に舞台にしている点が災いして注目されなかったとの事ですが、近年「ノパルガース」と題名を変えて復刊されてから徐々に評価が高まっているそうです。
国防総省所属の科学者ポール・バークは信じられない事に突然謎の異星人ザックス人に拉致され、相次ぐ戦乱で荒廃した彼らの母性に連れて来られる。彼らはトープチュと自称し通常は見えない寄生生命体ノパルに取り憑かれた同族チチュミーと熾烈な戦争を続けていた。バークは彼らにノパルの発生源の惑星ノパルガースを浄化する協力を求められるのだが・・・・。
本書はスケールが大きいように見えますが、地球人で事件の全貌を知らされるのがたったの3人に限定されていますので、結局はごく小さな規模の物語に思えます。ノパルのせいで地球人の進化が阻害されているという設定が巧みで良いと思います。しかし読み進む内に段々と危機感が麻痺して来て怪物も必要悪のように思えて来ますが、でもそれは著者の計算した狙いでもあるのでしょう。途中でザックス人が秘密を知られた地球人をあっさりと無慈悲に殺したりして凶悪な傾向が強まり、やがて明らかとなる更に上を行く怪物との対決により一気に決着がつき一件落着!と行きそうになりますが・・・・、そう上手くは行かず、やや盛り上がりに欠けるのが残念です。でも、それも読者を大いに期待させておいてわざと外して喜ぶ少し天邪鬼な著者の芸風なのでしょう。それでもやはりもう少し終盤の盛り上がりがあれば良かったと思いますし、物語はきっちりと片がついて完結するのが当たり前と考える方にはご不満もあろうかとは思いますが、SF初心者からマニアまで久々にベテランの味がする懐かしい面白古典SFを素直にお楽しみ頂きたいと思います。