1982年バイロイト音楽祭での上演を収録したこの映像と音声は、私が高校生だったころNHKの教育テレビで放映されたのを覚えている。当時まだ教育テレビは(少なくとも私が住んでいた地域では)モノラル放送だったが、オペラ作品を最初から最後まで視聴するのは初めての体験だったし、高校生の私は今と違ってロマンチストであったので、第1幕を視聴していわゆるディオニュソス的陶酔に陥り、第2幕と第3幕はすべてカセットテープに録音した。
タイトルロールを歌っているペーター・ホフマンは数年後来日したが、確かそのとき初めて私はNHKホールでサヴァリッシュやN響をも聴いたのだった。そのコンサートでも、ホフマンは確か『ローエングリン』から「聖杯の歌」や「名のりの歌」を歌っていた。ただ、バイロイトのときと違い調子が悪かったようだ。
ロック歌手でもあったホフマンはその後、声を潰したためか、早々にオペラ歌手を引退した。とはいえ、ミュージカルなどに出演してヨーロッパでは大分人気があったらしい。90年代半ばからパーキンソン病に苦しめられ、2000年に最後のコンサートツアーを強行したあと引退。今は食事も自分では取れない状態と聞く。『ローエングリン』のベストかどうかは分からないが、私にとって聖杯の騎士ローエングリンのイメージを作ってくれたのはこの上演だった。青春の思い出として、星4つをあげよう。