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レビュー対象商品: ネパール人の暮らしと政治―「風刺笑劇」の世界から (中公新書) (新書)
1958年生まれのアジア社会文化史研究者が、1988〜89年のカトマンズ滞在体験(当時インドのネルー大学の院生)をもとに、日本の一面的なネパール理解を修正すべく、月刊誌『記録』連載に加筆・修正して1993年に刊行した新書本。ネパールは1960年頃よりパンチャーヤト体制(王制下での「政党の無い民主主義」体制)を敷いており、それは1979年の反体制運動の高揚後も、白色テロ下の国民投票により、修正の上1990年まで維持された。著者はこの体制の末期に、ネパール社会の実態を知るために、検閲制度ゆえ当てにならない政府発表やマスコミ報道ではなく、コメディアン「マハ」(異なるカーストに属し、共に異カースト婚をし、カトマンズ周辺で絶大な人気を誇る、教養ある二人の男性芸人。著者と親交があるが、国家意識についてはズレがある)の風刺笑劇=コメディーを研究対象に選ぶ(ただしネパール人の手を借りて)。本書では、彼らの風刺笑劇を随所に引用しつつ、風刺笑劇の伝統、賄賂の横行、民衆に潜在する反王室感情、反体制運動(1990年まで対立していたネパール会議派・コミュニスト諸派など)、多民族性(ネワール語禁圧政策、ゴルカ兵を輩出する少数民族等)、対インド関係(反インド感情、タライ地域のインド系住民、インドへの出稼ぎ・誘拐、インド人の流入とネパール政治家の汚職、国境の曖昧さ)、国際「援助」の問題性(国境を越えた政治のあり方の問題としての、国際「援助」・観光産業・汚職等による環境破壊・「後進国」化、現地人の「二級市民」化、特に日本との関係)を論じている。私は著者の基本的なスタンスに共感できるところが多かった。ダージリン茶園やミルク・ボイコットの話も興味深いが、それ以上にマハの風刺の鋭さが印象に残る。他方、対中国関係やカトマンズ周辺以外の地方については具体的に触れられていず、また伝聞情報も多い。
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