『安心社会から信頼社会へ』(1999年 中央公論新社)の著者による、「社会秩序の作り方」について書かれた本。見た目からもっとお手軽な内容の本かと思っていたら、中身は意外と学術寄り。ただし専門書というわけでもなく、誰に向けて書かれているのかよくわからない本、という印象も受けた(『日本の「安心」はなぜ、消えたのか』(2008年 集英社インターナショナル)の後半を面白く読んだ読者がもう少し本格的な本を探しているなら、本書なんか良いかも知れない)。
前半(第3章まで)と後半(第4・5章)でやや趣きが異なるように思う。前半は、著者によるこれまでの「閉ざされた安心社会から開かれた信頼社会へ」の議論の要約とも言える内容だが、第3章で紹介されている「ネットオークション実験」の結果から「ポジティブ評判」の思わぬ効果が見出されると、後半では一転、インターネットに代表される匿名の世界に「安心」をもたらすテクノロジー(評価・評価者に対するメタ評価を含む相互評価システム)の満たすべき要件について議論し、日本社会の今後のあり方を占う内容となっている。
最初に読んだときには、後半に入って急にテーマが変わったように感じ、また最大の紙数を占める第4章が全体の議論の中に適切に位置づけられていないように思ったのだが、よく考えてみると議論の展開に飛躍があるわけでもなく、それなりに多岐に渡る内容(特に第5章)も破綻せずにまとめられている。ただし、議論がところどころ微妙に甘い上(特にカンジンの実験結果に関する部分)、本書全体の見取り図がなく、読んでみないことには何が書いてあるかわからない本、という印象を受けた。
中途半端な印象。日本社会の将来の姿として「開かれた信頼社会」だけでなく「開かれた安心社会」という可能性を示したことは、ひょっとすると著者の議論における大きな転換点になるのではないかとも思うのだが…。